ちょっとマニアックな東京五輪マラソンコース解説②北大の学生寮は「雪の結晶」?「網走監獄」?

 

中心部から放射状に六方向に広がる巨大な枝―雪の結晶を思わせる建築物は北海道大学の学生寮「恵迪寮」です。“結晶”の真ん中は共用棟で、そこから6棟の共用棟に枝分かれしています。「雪は天から送られた手紙である」の名言を残した北大の中谷宇吉郎博士は雪の結晶の美しさに魅せられ、世界で初めて人工的に雪の結晶を作り出すことに成功した科学者です。1941年に北大に低温科学研究所が設置されると、軍の要請から、ゼロ戦の翼に付着する氷害の研究などが行われました。恵迪寮は北大と縁のある雪の結晶をデザイン化したものと言われていますが、網走監獄をモチーフにしたという都市伝説もあります。

ただの都市伝説・・・とも言い切れないのは恵迪寮が建て替えられたときの時代背景にあります。1960年代には、安保闘争など大学紛争が社会問題化。1969年に講堂や校舎を占拠した学生排除に機動隊が登場するなど社会問題化しました。これを受けて、闘争の温床が大学寮にあると判断した文部省は、寮から集会向きの講堂や大食堂を排除し、それまでの大部屋制から個室制とすることで学生の分断を図りました。また、寮の事務室に大学職員が駐在して寮内を監視し、管理運営を強化しました。

 

今の恵迪寮が建て替えられたのはそうした時代の真っ只中であり、監視のために中央の共用棟に大学職員が配置されていたことを考えると、「雪の結晶」というデザインを隠れ蓑にした「網走監獄」というのもあながち都市伝説とは言えないのかもしれません。

 

もっとも、建て替えからほどなくして大学紛争は沈静化。完全個室制を主張していた大学側も複数形態部屋を認め、昔から続いていた共同生活は維持されていました。しかし、近年は寮生のライフスタイルの変化や多忙化などから、個室希望者や寮の自治に参加しない寮生が増えており、中でも自治に関しては、寮長選挙が有効投票数(全寮生の2/3)ギリギリで何とか成立するなど深刻の事態になっているそうです。

 

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