東京五輪マラソンコースの最南端に位置する南平岸地区。上空から眺めると、立ち並ぶビルやマンションの間をまるで巨大な蛇がはっているようです。この“大蛇”の正体は、地下鉄南北線。1972年2月の札幌冬季オリンピックに間に合うように、短期間に建設できる高架式が採用されました。
もっとも、札幌市が地下鉄の建設を申請した際、大蔵省は難色を示していました。「札幌に地下鉄を作って赤字になったらどうするんだ、熊でも乗せるのか」という大蔵省職員の冗談に、当時の市交通局長・大刀豊(だいとう ゆたか)が「料金を払えば熊でも乗せる」と言ったという逸話が残っています。
当初の計画では、市内中心部だけが地下を通り、残りは高架となる予定でした。しかし、景観や騒音の問題からこの計画は変更となり、南平岸駅ー真駒内駅間を除き、全て地下となりました。このため、平岸駅から南平岸駅間のわずか1.1キロの距離で地下から高架に登る急勾配の路線となり、鉄輪ではこの急勾配を登ることは不可能となってしまいました。そのため、摩擦係数が高いゴム輪が採用され、札幌の地下鉄は、「ゴム輪+高架+シェルター」という世界でも例のない独特な方式となりました。
昔は民家もまばらで、リンゴ畑や水田が広がる町でしたが、地下鉄建設とともに宅地化が進んだ南平岸地区。夕日を受けて銀色に浮かび上がる地下鉄のシェルターと、たそがれた街並みのシルエットが、未来都市を思わせます。
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