昭和13年に完成した下本村共同選果場。補助金の交付を受けられるよう1階は貯蔵庫、2階は作業場兼集会所として設計されました。その痕跡をたどってみましょう。
まずぱっと目を引くのが、1階と2階の外観の違いです。2階には縦長の大きな窓が五つ並んでいるのに対して、1階には小さな窓が一つだけ。創建当初は現在の入口のところにもう一つ小さい窓がありました。
1階の貯蔵庫にはできるだけ光をあてないようにしたのに対し、2階のコミュニティスペースには採光のため大きな窓が設けられたことがわかります。
内部は現在入口側のスペースが吹き抜けになっていますが、もともとは1階と2階に完全に仕切られていました。
1階と2階の間に、かつての梁の切れ端が等間隔に数本埋まったまま残されています。
では、1階と2階の行き来はどうしていたのでしょうか?答えは建物の外側にあります。
東側の2階部分に縦長の「窓」があります。これはもともとは窓ではなく、階段の入口でした。木製の階段がここに設けられていたのです。
正面側の窓の下にある窓台は外側に出っ張っていますが、東側の「窓」の下の窓台は出っ張っていません。ここに階段がつけられることになっていたため、出っ張っていては邪魔になるからです。
現在ではサッポロ珈琲館平岸店として周辺住民の憩いの場となっていますが、細部をよく観察すると歴史の痕跡をたどることができます。
道新りんご新聞で好評連載中の平岸の歴史を訪ねて。来月からいよいよ「りんご編」がスタートします。過去最長シリーズで、過去最高のクオリティになりました。ご期待下さい!