“顧客視点”で新聞販売業を考える 道新りんご新聞が地域情報の発信にこだわる理由

先日発売された顧客視点の企業戦略の中で、著者は「世の中にはあらためて顧客視点で考えるとおかしい出来事がたくさんある」と指摘し、その例として携帯キャリアが新規乗り換えを推奨するために数万円の高額なキャッシュバックを行った一方、既存顧客を冷遇していたことをあげています。

 

携帯キャリアのみならず、「釣った魚に餌を上げない」事例として新聞販売店も槍玉に挙げられています。

 

「新聞の販売店が他紙からの乗り換えの際にオマケにつけるノベルティ目当てで、毎年のように購読する新聞社を切り替える人がいる」、「こうした手法や会社は、本当に「顧客視点」と言えるでしょうか。」と。

 

以前から私が主張してきたこと(道新りんご新聞の1年を総括する)とぴったり一致したので、この機会になぜ道新りんご新聞はこれほどまでに地域情報の発信にこだわるのか、これまであまり語ってこなかったビジネス面の視点で考えてみたいと思います。

ビジネスとして考えれば、新規顧客獲得に注力することは必ずしも間違っているわけではありません。それによって高いシェアを獲得し、商品力をあげることで顧客に還元できるからです。

 

みんなが新聞を読むのがあたりまえだった時代には、他紙からシェアを奪うために、新規顧客獲得に資金と人員を投入することはビジネスモデルとして正しかったと思います。

 

ただし、このようなビジネスモデルが通用したのは昔の話で、現在も、そして残念ながら将来もそのような時代ではありません。

 

すでに若い世代では、質の高い情報にはコストをかけても良いと考える層(潜在的購読者層)と、情報は無料でありネットでただで手に入ると考える層に二分化されています。

 

私自身は前者であり、後者は自己の成長という面で結果的に損をしている(特に子どもは)との考えですが、このような時代にあってなお過去の成功体験にしばられ、ビジネスモデルにすがることは座して死を待つのみでしょう。

 

今後の新聞販売業には、既存顧客を守りつつ、いかに潜在的購読者層を取り込むかが重要になります。そのためには、新規顧客獲得に注いでいたエネルギーを別の方向に転換させる必要があります。

 

その答えの一つが地域情報の発信です。ビジネスでは、自分の得意分野を把握し、他社との差別化が不可欠です。地域に根を下ろす新聞販売店には、長年培ったネットワークと情報があります。また、購読者減少の主な要因であるインターネットには、半係数km圏内の超ローカルな情報がほとんどないという弱点があります。

 

もちろんくすみ書房さんの倒産の例にみるように、いくら志が高く、ユニークな企画を連発しても、上手くいかなかったケースもありますが、『死ぬときは、たとえどぶの中でも前向きに倒れて死』のうと思います。

 

※道新りんご新聞は毎月1日・15日に、平岸全域の北海道新聞朝刊に折り込まれます。新聞の1週間無料お試しキャンペーン実施中!