“本当に役立つ”防災マップの作り方 『平岸地区防災マップ』はこうしてできた

独自に作った防災マップを手にする中目明徳会長(2月7日北海道新聞朝刊22面より)
独自に作った防災マップを手にする中目明徳会長(2月7日北海道新聞朝刊22面より)

本日(2月7日)の北海道新聞朝刊で、平岸まちづくり協議会が作成した「平岸地区防災マップ」が紹介されています(防災マップはこちらのページからダウンロードできます)。

 

■“本当に役立つ”防災マップ

「本当に役立つ防災マップを作りませんか?」。私のもとに平岸まちづくり協議会の中目明徳会長から相談の電話があったのは昨年4月、熊本地震が発生してからほどない時期でした。

 

「本当に役立つ」という言葉の裏には、既存のものは役に立たないというニュアンスがありました。防災マップは、既に札幌市が地震防災マップ洪水ハザードマップなどを製作しています。しかしこれらのハザードマップは災害の危険性は教えてくれても、ひとたび災害が起きたときに地域住民が必要とする情報が載っているわけではありません。

  

防災マップ作りは、災害時に“本当に役立つ”情報とは何か?を考えることからスタートしました。そのため、大規模な災害時に被災者はどのような生活を送り、何に困っていたのかを調べることにしました。

生活関連情報(2011年3月16日河北新報朝刊7面より)
生活関連情報(2011年3月16日河北新報朝刊7面より)

 『河北新報特別縮刷版 3.11東日本大震災1ヵ月の記録』。この本には、東日本大震災発生翌日から1カ月分の河北新報が収められています。3月16日の朝刊に、生活関連情報として、「ごみ」「学校・保育所」「通信」「医療」「身の回り品」「金融機関」「交通」に関する情報が掲載されています。

 

生活関連情報は、被災者の生活再建に直結するページとして読者に最も読まれる面となりました。

検索データから見る熊本地震
検索データから見る熊本地震

また、Yahooニュースと朝日新聞社が共同で企画した検索データから見る熊本地震では、熊本地震から6ヵ月間の検索ワードの推移が分析されています。

 

検索ワードは、被災者が知りたい情報と言い換えることができます。この検索ワードを調べることで、災害時に求められる情報を割り出しました。

■何を載せるのか?何を載せないのか?

これらの資料から、生活・安全・通信の3分野の情報を、災害時に必要な情報として、防災マップに落とし込む方針としました。

 

生活情報は、食料品・水・生活物資など災害時に必要とされるものを入手できる場所として、スーパー・コンビニ・ガソリンスタンド・給水拠点・災害対応自動販売機を掲載しています。

 

安全情報は、安全の確保に繋がる避難所・公園・公的機関を掲載しました。命に関わる情報としては、病院・AED設置場所・ドラッグストアを掲載。各町内会が災害時に活用するための消火、救出、救護活動に必要な資機材が収められた防災資機材倉庫も載せています。

 

生活情報・安全情報に比べ、見落とされがちなのが通信に関する情報です。しかしながら、災害時に最も必要とされるのが情報であり、情報収集手段・発信手段として欠かせないのがスマートフォンです。

 

そこで、平岸地区防災マップでは、携帯電話充電スポットを掲載しました。さらに、平岸地区防災マップ&防災情報のページでは、紙面スペースの制約上防災マップに載せることのできなかった「電源カフェ・電源席」と「公衆無線LAN(Wi-Fi)スポット」を追加しました。

 

大規模な災害時には一般の電話回線が制限されるため、電話が繋がりにくい状態になります。そのため、防災マップには公衆電話の位置も載せています。

 

何を載せるのかと同じぐらい大事なのが何を載せないかです。紙面スペースの制約上、ある程度載せる情報はしぼらなくてはなりません。

 

当初の予定では、公衆無線LAN(Wi-Fi)スポットを載せる予定でしたが、あまりに数が多く(マップの範囲内で数百程度)、掲載を断念しました。しかし、地方など公衆無線LAN(Wi-Fi)スポットの数が少ない地域では載せた方が良いと思います。

 

「災害時に役立つ情報を載せる」ことがコンセプトのため、災害の危険性を示す想定地震震度などのハザード情報は省きましたが、津波の被害が想定される地域では、標高や津波の被害が予想される地域などを載せておいてもよいと思います。

 

地域特性によって必要とされる情報は異なりますので、優先順位をつけて絞り込んでいくことが大事です。

■情報の備蓄

平岸地区防災マップは、老若男女あらゆる世代に行き渡らせることを目指しました。現代は、世代によって情報収集手段が大きく異なり、若年層はインターネット、高齢者層は紙媒体が情報収集の中心です。

 

したがって、平岸地区防災マップも紙の発行だけにとどまらず、インターネット上でもダウンロードできるようにしました。ネット上にアップロードしておけば、紙の防災マップを持っていない人でも、非常時にアクセスできる利点があります。

 

熊本地震では、被災直後から多くの人が「避難所+地域名」で検索しました(検索データから見る熊本地震より)。しかし、いくら検索してもネット上に情報が存在しなければ災害時に情報を行き渡らせることはできません。ネット上に、防災情報を集約しておけば、非常時に地域住民が検索した際、必要な情報を手に入れることができます。

 

そこで、平岸地区防災マップ&防災情報のページでは、防災マップに掲載している情報をより詳しく紹介しています。例えば、スーパー・ガソリンスタンド・病院などの生活情報は、住所・電話番号・営業時間・ホームページを掲載。その他にも、マップに載せきれなかった防災情報(Wi-Fiスポット、電源カフェ、入浴施設、ホームセンターなど)を多数掲載しています。

 

防災マップは作って終わりではなく、災害時にどのように情報を行き渡らせるかを考えて準備しておくことが大事です。

 

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