新聞文化とラジオ文化の共通点と相違点

糸井重里さんは、毎日新聞のインタビューで「新聞や雑誌は決まった面積があって、載るものが決まってきた。紙面という面積を売るという前提で作っていった文化になっています。」と語っています。

 

この例えは、紙媒体の製作に携わっている人なら至極納得の行く表現でしょう。たいしたニュースがないときでも、逆に重大ニュースが重なったときでも、基本的に同じ程度の面積を埋めて新聞は発行されます。

 

私がFMアップルで番組を持たせてもらってから2年ほど経ちますが、ラジオにも似たような文化を感じています。

糸井さん流に表現するなら、「ラジオは決まった時間を売る前提で作られた文化」ということになります。

 

面白い話題・ニュースがあっても、なくても定まった時間内で話し続けなければなりません。

 

私はラジオは本職ではないので偉そうなことはいえませんが、喋るネタが想定より短くなり、残り時間をどう埋めるか焦ったり、逆に話したい話題を時間の都合で泣く泣くカットすることも珍しくない・・・というか、未だに毎回どちらかのパターンです。

 

一方で、そういった制約がないのがインターネットになります。例えば、先日掲載した「大人も熱中 地下鉄車両基地見学」の記事。こちらはさっぽろ10区にも掲載していただきましたが、紙面の場合、写真1枚プラス説明程度しかスペースを割けません。

 

ネットではそういった物理的制約がないので、写真も文章も好きなだけ載せることができます(時間的制約はありますが)。

 

では、スペースに制限がある紙媒体のほうが使い勝手が悪いのかというとそんなことはありません。毎日、決まったレイアウトで構成される紙面は、短時間で情報を読み取るのに最適だからです。世の中の流れ、身近な話題、気になるニュースなどを最も効率よく知ることができるのが新聞の長所になります。

 

新聞とラジオは決められた枠の中に収めるという点で共通の文化といえますが、異なる点ももちろんあります。

 

新聞は定期購読者に支えられたB to C型のビジネスモデルですが、ラジオは広告主に支えられたB to B型のビジネスモデルになります。もちろんラジオは視聴者がいて成り立っていますが、視聴者からお金をいただくわけではなく、視聴者を多く獲得することで広告媒体としての価値を高め、広告収入で経営するビジネスモデルになっています。

 

新聞の場合、広告と記事は明確に区分されています。しかし、ラジオの場合、どこの局でも、番組内で商品の紹介やスポンサーの宣伝が始まったり、広告との境界がややあいまいに感じます。

 

一般に新聞の作り手は商品である意識が薄く、使命感とか正義感といったあまりお金に結びつかない動機をモチベーションにしている人が多く(多分私もその一人ですが)、情報発信の一次生産者を担っている割に、ヤフーニュースやまとめサイトに売上をかっさらわれている商売ベタな側面もあります。

 

良いか悪いかは別として、購読者に重点を置いているのが新聞で、視聴者に配慮しつつも広告主にも気を配らなければならないのがラジオと感じています。