陥没事故は札幌でも起こり得る?望月寒川放水路トンネル工事来年開始

11月9日北海道新聞朝刊31面より
11月9日北海道新聞朝刊31面より

11月9日の北海道新聞31面『地下鉄工事原因火 博多陥没 現場上部の土砂崩落』の記事によれば、今回の陥没事故は地下鉄の工事の影響で粘土層の構造が変わり、粘土層の上にある水を含んだ砂の層が下に潜り込んで崩れたのが原因と推測されています。

 

道新りんご新聞4月1日号の『平岸防災~明日に備えて』で特集しましたが、来年4月から豊平川と望月寒川の間を結ぶ地下放水トンネル工事が始まります。

 

平岸ー澄川地区の地下1.9キロメートルを掘り進める大工事ですが、今回の陥没事故が起きる心配はないのか?両地点の地質構造を比較してみました。

 

望月寒川放水路トンネル概要(北海道空知総合振興局 札幌建設管理部提供)
望月寒川放水路トンネル概要(北海道空知総合振興局 札幌建設管理部提供)

望月寒川は、2年前の9月11日に起きた“札幌豪雨”の際にも氾濫したように、市内でも有数の暴れ川として知られています。その治水対策として行われるのが放水路トンネルです。

 

西岡中央公園をトンネルの入り口とし、ここから西に澄川~平岸地区の市道の地下を通り、ミュンヘン大橋のたもとにある精進川放水路脇から豊平川へ注ぐ全長1.9kmにおよぶ地下放水路を掘る壮大なプロジェクトです。大雨により水位が上がると、放水路の入り口の堰を越えた水が、地下放水路に誘導され、後は自然の落差で精進川放水路脇から豊平川へ流れ出る仕組みになっています。

 

このような大きな工事の際には必ずボーリング調査が行われ、地下構造を調査します。その結果から作られたのがこちらの地質断面図になります。

放水トンネル計画縦断図(北海道空知総合振興局 札幌建設管理部提供)
放水トンネル計画縦断図(北海道空知総合振興局 札幌建設管理部提供)

トンネルを掘る場所の断面を真横から見た図です。一番上のピンク色の部分は火山灰で、4万年前に支笏火山が大噴火したときの火砕流が台地を形作っていることがよくわかります。薄い黄色が砂の層、やや濃い黄色が砂礫の層で、青色が粘土層です。

 

これを見ると、火山灰層の下に粘土層が広がり、その下にトンネルが掘られることがわかります。火山灰は水が浸透しやすいのに対し、粘土層は水を透しませんので、トンネルの上の粘土層の上には水を含んだ火山灰層が広がっている可能性があります。

 

粘土層の上を水を含んだ砂の層が覆っている博多の陥没事故現場の地質構造とよく似ていることがわかります。工法なども違うので単純な比較はできない部分もありますが、細心の注意を払う必要がありそうです。