タバコの箱でできたリアルすぎる『豊平館』in天神山アートスタジオ

6月20日に豊平館がリニューアルオープンします。豊平館は、明治13年開拓使により高級西洋ホテルとして建造されました。白地の壁にマリンブルーが映えるアメリカ様式の美しい建築物として札幌市民に親しまれています。

 

さて、平岸にも一風変わった『豊平館』があります。天神山アートスタジオのエントランスの本棚の上にひっそりとたたずむ『豊平館』は、美園の故・加藤幸作さんが制作した模型で、材料はなんとすべてタバコの箱。

 

驚きなのが一切着色はせず、パッケージの色をそのまま使って細部が表現されていること。

 

詳しくは、本日の北海道新聞朝刊に折り込みました道新りんご新聞6月15日号をご覧ください。

 

さて、このブログでは、この記事ができあがるまでの裏話をしたいと思います。

 

最初に、この模型を見たのは今年の4月30日。エントランスホールの本棚に手を伸ばした時に、本棚の上にひっそりと置いてあるのにはじめて気付きました(アートスタジオには何回も来ていましたが)。

6月20日にリニューアルオープンする豊平館
6月20日にリニューアルオープンする豊平館
タバコの箱で制作された豊平館の模型
タバコの箱で制作された豊平館の模型

壁に白地に銀色の★マークが散りばめられている
壁に白地に銀色の★マークが散りばめられている

正直、その時の感想はきれいな模型だな程度の感想でした。

 

6月20日に本家の豊平館がリニューアルすることもあり、とりあえず頭の片隅に置いておくぐらいで、この時は記事にする予定はありませんでした。

 

それから一ヶ月後の5月30日、天神山アートスタジオの施設運営責任者の小林亮太郎さんとお話する機会があり、この豊平館の模型について軽い気持ちで聞いてみたところ、材料は全てタバコの箱で出来ていると教えて頂き、がぜん興味が湧き出しました。

 

もう一度よく模型を見てみると、なるほど壁には白地に銀色の★マークが散りばめられており、マイルドセブンの箱で出来ていることがわかります。

さらに、最初見たとき気づかなかったものの、模型の手前に無造作に作品カードが置かれており(上の模型の写真の手前中央に写っている四角いカード)、作品の概要が書かれていました。

 

製作者は美園の加藤幸作さんとあります。北海道新聞のデータベースで過去の記事を検索すると1件だけヒットしました。

 

それが1992年11月19日の記事です。以下転載。

▽…時計台保存論議で揺れている札幌市に十八日、たばこのパッケージで作った時計台などのミニチュア七点が贈られた。

▽…同市豊平区の加藤幸作さん(86)が寄贈した。四カ月かけて製作した時計台は、パッケージ千枚を使い、高さ六十センチほどで実物の五十分の一大。本物の時計も内蔵している。

▽…軽くて簡単に“移転”できそうなミニチュアの時計台を前に、桂信雄市長は最近激しくなってきた現地保存、移転両派の論議をしばし忘れ「見事なものですね」。

 

この記事では、当時移転問題に揺れていた時計台に焦点があたっており、寄贈された中に豊平館が含まれていたのかわかりません。データベース検索の場合、古い記事は文章だけで、写真は載っていないのが普通です。

そこで、図書館でこの日の新聞を探し、コピーしたのがこちらの写真になります。写真左が加藤幸作さん、中央が当時の桂信雄市長になります。

 

加藤さんの手前にある建物を見ると、特徴的な三角屋根に、煙突や窓の配置からいって豊平館に間違いありません!!

 

これで豊平館が1992年に札幌市に寄贈されたことがわかりました。その後アートスタジオの前身である天神山国際ゲストハウスを管理していた札幌国際プラザに伺った所、1992年に働いていた職員が国際ゲストハウスの図書室に展示されていたことを覚えていました。

 

つまり、札幌市に寄贈されてすぐに国際ゲストハウスに移されたことになります。アートスタジオへのリニューアル後も残され、今に至っているのです。

 

後は、加藤さんのご子息に取材して、模型製作に関するエピソード(どうやってタバコの箱を集めたのかなど)を伺い、まとめ上げたのが、今回の記事になります。

 

そして、取材をすすめるうちに加藤さんは豊平館や時計台にも、とんでもない作品を制作していたことがわかったのです。長くなりましたので、続きはまた後日載せたいと思います。