日本ハム新球場構想の背景にせまる 「賃貸」か「マイホーム」か

プロ野球北海道日本ハムが新球場を建設し、札幌ドームから本拠地を移す構想を進めていることが分かりました。北海道大学構内、北広島市の「きたひろしま総合運動公園」予定地、真駒内地区、月寒ドーム跡地などが候補に挙がっています。札幌ドームでは実現できていない球場と球団の経営を一体化させて収益力を強化することが狙いのようです。本年度中にも候補地を決め、2023年の開場を目指しています(詳しくはどうしん電子版のページをご覧ください)。

 

このニュースは、北海道新聞だけでなく、日経新聞(日本ハムが新球場計画 札幌近郊の候補地調査 )やヤフーニュース

「日ハムの球団経営を圧迫する旧態依然の壁」)などで報道されていますので、それらを読み比べて、新球場構想の背景を考えたいと思います。

日本ハムは2004年に北海道に移転して以来、地域密着を掲げ昨季195万人を動員する人気球団に成長しました。ただ、本拠地での暮らしは必ずしも快適だったとは言えません。

 

日本ハムは、札幌ドームの最大の利用者とはいえ「店子」という立場です。借主には、家賃にあたる球場使用料を払う必要があります。市の条例では、1試合800万円で、2万人を超えると1人当たり400円の追加料金が発生します。昨季の平均観客数は2万7千人ですから、1試合当たり1,080万円×70試合で、年間約7億5千万円の計算になります。

 

これに加え、警備費、清掃代なども球団持ちであり、広告看板代に関しても球団が、2億5000万円で買い取っています。しかもドーム内の飲食店の運営、売上げは、すべてドーム側の収入で、グッズに関しても、直営ではなくドームに卸す形態。

 

これまで球団は、使用料の優遇や球団の広告枠を増やすよう球場側に求めてきましたが、実現していません。それどころか、今年4月からは使用料が値上がりする事態になっています(消費税増税分)。

 

球団関係者は、「ドーム側が理解を示してくれれば、球団経営は本当の意味で黒字化して、ダルビッシュや糸井を簡単に出さなくて済んだのかもしれない。」と言っています。ダルビッシュのポスティング移籍を認めたのは、本人の強い希望を受け入れたものですが、年俸が高騰するダルビッシュを経営上、保持しにくくなっていた側面もあります。

 

パ・リーグで球団と球場の運営が違うのは日本ハムだけ。楽天は、今季日本球界初の観覧車をスタジアムに設置し、メジャーリーグのボールパークのようなファンが楽しめる球場を目指しています。ソフトバンクは2012年にヤフオクドームを買収し、年間50億円に上っていた球場使用料の負担をなくしました。高い収益力をファンに還元してさらなる動員につなげ、選手強化にも充てて常勝チームを作り上げています。

 

日本ハムは親会社から広告宣伝費約30億円を含めて黒字を確保してきましたが、自前の球場なら広告や飲食の収入が増え、大型商業施設の集客力で新たな客層を開拓できると踏んでいます。窮屈な「賃貸暮らし」を抜け出し、「マイホーム」を建てたいといったところですね。

 

ただ、新球場の候補地は広さや利便性で一長一短があり、多額の建設資金に見合う収益を見込めるか懐疑的な見方も出ています。札幌ドームにとっては収入の柱を失いかねないだけに、所有者である札幌市との協議が今後のカギを握りそうです。

 

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