アンパン道路の月寒側の起点から数百メートルほど平岸方面に進んだところに、3階建ての目を引く建築物があります。
日本家屋のようでもあり、洋風建築のようでもあるこの不思議な建物は、建築家の倉本龍彦氏が、昭和47年に自宅として建築したもので、子ども(倉本琢)の名をとって、「たくんち」と名づけられました。
一見すると木造に見えますが、実は鉄筋コンクリート造で、建築当初はコンクリートの打ちっぱなしだったものを、昭和58年に改築した際、当時としては斬新な外断熱工法を用いて木製の下見板を張ったそうです(さっぽろ再生建物案内第2版 札幌建築鑑賞会2003年より)。
倉本さんの設計事務所を経て、現在は「サッポロ珈琲館 月寒店」として利用されています。ここまで歩くと小腹も減ってきたので、中にはいってみました。
木製の階段はすだれ状に階下が透過できるオシャレなデザインとなっており、遊び心が感じられます。プレーンワッフルとコーヒーをいただき、優雅な時間を過ごしました。
倉本さんの建築物は、このたくんちが第1号ですが、道内にはこの他にもたくさんの建物が建てられています。
特に有名なのが、ニセコに建てられた「ばあちゃん家」。何もない平野の中にただ一棟斜め45度に建つ奇抜なデザインは見る人の度肝を抜きます。
私が子供の頃、ニセコのスキー場へ向かう道中にあったこの家は、その後三十年を経過してもはっきり覚えていましたが、その由来は3年前の北海道新聞の記事で始めて知りました。以下、2013年12月23日北海道新聞朝刊より抜粋します。
この家は倉本さんが両親のために建てたもので、なぜあんなに傾けたのかというと、
①西風が強かったこと。風を逃すために傾けた。
②雪かきが楽なこと。ニセコは道内きっての豪雪地帯だが、傾いた頭の側の下に玄関を置くことで雪かきの範囲が狭くなる。そんな親孝行の思いから。
③羊蹄山の眺望を楽しめるように。頭の側がガラス窓で、3階から雄姿を満喫することができた。
そして4つ目は? 倉本さんは笑いながらこう言いました。「目立ちたかったから」。建築当時25歳の若者だった倉本さんはにとってこの建物は、自己表現の場所でもあったんですね。
当時は「あの家、傾いて気の毒だね」と言われたり、気を取られて路肩に落ちる車があったりしたそう。2012年には「ばあちゃん家」の設計図が、パリの三大美術館の一つ、ポンピドゥー国立芸術文化センターの国立近代美術館に永久収蔵されました。この設計図を見ると、中はちゃんと水平になっていますね、安心しました。
「ばあちゃん家」も「たくんち」もいつまでも大切に残されて欲しいですね。
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